「都市部の優秀な人材にアプローチできない...」 「採用コストがかさむ一方で成果が上がらない...」 「自社の魅力や企業文化をうまく伝えられない...」
地方企業の採用担当者なら、こんな悩みを抱えたことがあるのではないでしょうか。
経済産業省の調査によれば、地方の中小企業の約70%が「採用活動で都市部企業との格差」を感じています。コロナ禍を経て、採用活動も大きく変わり、オンライン面接は当たり前になりましたが、「画面越しの会話」だけでは企業の魅力を伝えるのに限界があることも見えてきました。
そこで注目を集めているのが、3D仮想空間「メタバース」を活用した採用活動です。地理的な制約を超え、コストを抑えながら、より効果的な採用活動を実現するこの新しい手法について、成功事例とともにご紹介します。
目次
「もっと優秀な人材を採用したい」「自社の魅力をうまく伝えたい」「採用コストを抑えたい」
——採用活動に携わる担当者なら、誰もが感じる悩みではないでしょうか。
地方企業にとって、優秀な人材へのアプローチには大きな障壁があります
・東京など都市部の学生との接点が少ない
・遠方からの応募者に交通費負担が大きい
・採用イベントへの参加には物理的な制約がある
・地方学生は都市部企業との接点が限られている
リクルート社の調査によれば、地方の学生が就職活動中に訪問できる企業数は都市部の学生の約3分の1にとどまります。この地域格差は、学生と企業の「出会いの機会損失」となっています。
従来の採用活動には多くのコストがかかります
・合同説明会の出展料が高額
・担当者の出張費・宿泊費がかさむ
・会場設営や資料準備に人手が必要
・学生の交通費負担が応募のハードルに
採用活動のコストは年々上昇傾向にあり、特に中小企業にとっては大きな負担となっています。コストを抑えようとすると活動範囲が狭まり、優秀な人材との出会いの機会も減少してしまいます。
企業の魅力や文化を伝えることの難しさ
・限られた面接時間では企業の雰囲気が伝わりにくい
・パンフレットや動画では職場の実感が湧かない
・オンライン面接では相互理解に限界がある
・入社後のギャップが早期離職につながる
厚生労働省の調査によれば、入社3年以内の離職率は約30%に上り、その主な理由として「仕事内容・条件の相違」「企業文化・職場の雰囲気とのミスマッチ」が挙げられています。採用時点での相互理解不足が、その後の定着率に大きく影響しているのです。
メタバース採用は、従来の採用活動の限界を超える可能性を秘めています。特に注目したいのは次の3つのメリットです。
メタバース採用の最大の魅力は、場所を選ばず同じ体験ができること
・東京の学生も地方の学生も同じ「仮想空間」で企業と出会える
・移動時間ゼロで、全国どこからでも気軽に参加可能
・海外在住の人材とも簡単につながれる
・スマホからでもアクセスできる手軽さ
リクルート社の調査によれば、地方の学生が就職活動中に訪問できる企業数は都市部の学生の約3分の1にとどまります。メタバース採用は、こうした地域による格差を解消し、学生の住む場所に関わらず平等に企業と出会える環境を作り出します。
オンラインでありながら対面に近い体験を提供できるメタバース採用
・一般的な合同説明会と比較して30〜50%のコスト削減が可能
・学生・求職者の交通費や宿泊費の負担がなくなる
・準備や移動にかかる時間を本質的な対話に回せる
・短期間での開催や内容変更が容易に
あるIT企業では、メタバース採用の導入により一人当たりの採用コストが従来の約60%まで削減され、採用担当者の工数も約40%削減されました。この余力を候補者一人ひとりとの丁寧なコミュニケーションに振り向けることで、採用活動の「量から質への転換」が実現しています。
意外かもしれませんが、アバターを使うと人は本音を話しやすくなります
・肩書や外見による先入観が減り、フラットな対話が可能に
・バーチャルオフィスツアーで実際の職場環境を体感できる
・業務シミュレーションで仕事内容をリアルに理解できる
・普段は質問しづらいことも聞きやすくなる
メタバース空間での交流からは「リラックスして企業の人と話せた」「会社の雰囲気がよく伝わった」という感想が多く聞かれます。特に日本人は直接的な質問をしにくい傾向がありますが、アバターを介すると不思議と本音のコミュニケーションが生まれやすくなるようです。
メタバース採用の可能性にいち早く着目し、先駆的な取り組みを展開している企業の事例から、その効果と成功要因を探ります。
地方に拠点を置く企業が、首都圏や海外の学生にもアプローチするためメタバース空間を活用した会社説明会を開催。バーチャル空間での開催により全国からの参加が可能に。学生はアバターを通して気軽に質問でき、社員との距離感も縮まったことで、リアル説明会より活発な交流が生まれています。採用コスト削減と採用母集団の拡大を同時に実現する新たな採用モデルとして注目されています。
画像元:V-expo
参考:リピートでのご利用!学生からも高評価で今年は規模拡大!会社説明会!
甲府市役所が自宅など全国どこからでも、アバターを通じて出会う新しい形の合同企業説明会。自由な姿と名前で参加できるからこそ、気軽に本音を語り合える空間。-フリーガイダンス方式-各企業がブースを設けて説明を行いました。
画像元:甲府市役所
移動や身支度が不要な点や、アバターを通じて気軽に採用担当者へ質問できる環境が、対面式と比べて参加しやすいと好評。参加者にとっては、区が推進する「メタバース区役所」を実際に体験できる機会にもなりました。イベントでは仕事内容の説明に加え、採用担当者との個別質問会も実施され、より深い情報交換が可能になりました。
画像元:江戸川区役所
参考:ともに、生きる 江戸川区
AI技術とメタバースの組み合わせで、さらにパーソナライズされた体験が実現します
・AIアシスタントによる選考ナビゲーション 候補者の質問に24時間対応し、最適な情報を提供
・インテリジェントなマッチング 候補者の強みや志向性から最適な職種・部署を提案
・自動通訳・翻訳機能 言語の壁を超えたグローバルコミュニケーションが可能に
・適性診断と連動した仮想体験 自分に合った仕事内容を体験できるシミュレーション
こうした技術の進化により、大規模なイベントでありながら「一人ひとりに寄り添った体験」の提供が可能になりつつあります。
メタバース採用は、単発のイベントではなく、入社後も続く一貫した体験へと進化します
・採用から内定、入社までの一貫した体験設計 合格後もメタバース空間で内定者研修や交流会を実施
・バーチャルコミュニティの形成 内定者同士や先輩社員との継続的な交流の場を提供
・入社前教育プログラム 業務スキルや企業文化の学習を早期に開始
・メンター制度との連動 入社前から担当メンターとの関係構築を開始
特に注目すべきは「採用と育成の境界の曖昧化」です。早期段階から企業文化や業務内容に触れることで、入社後のギャップを最小限に抑える効果も期待されています。
一社だけで行う採用活動には限界があります。メタバースを活用すれば、複数の企業が連携して効果的な採用活動を展開できます
地域ぐるみの就職フェア開催
これまで個別に行っていた採用活動を、地域の複数企業が集まって「バーチャル地域就職フェア」として定期開催。学生は一度の訪問で地域の多様な企業と出会えるため、地方への興味が高まります。
地域の未来を作る人材育成プログラム
行政・学校・企業が一体となり、地域に必要な人材を育成するプログラムをメタバース上で展開。学生は早い段階から企業と交流しながら、その地域での将来像を描けるようになります。
大企業と中小企業のリレー型キャリア提案
「最初は大企業で基礎を学び、その後は専門性を活かして中小企業で活躍」など、複数企業をまたいだキャリアパスを共同提案。学生にとって長期的な成長の見通しが立てやすくなります。
業界の魅力を共同発信
同じ業界の企業が競争ではなく協力して「業界の魅力」をアピール。例えば製造業全体で「ものづくりの面白さ」を伝えるバーチャル体験を提供し、業界イメージを高めます。
メタバース採用は、単なるテクノロジートレンドではなく、採用市場における構造的課題を解決する可能性を持っています。地理的制約の解消、コスト削減、そして企業文化の効果的な伝達という3つの主要なメリットは、特に地方企業や中小企業の採用活動に新たな可能性をもたらします。
先進企業の事例に見られるように、メタバースの特性を理解し、目的に応じた戦略的な活用を行うことで、従来の採用活動では実現できなかった成果を上げることが可能です。特に重要なのは、「テクノロジーありき」ではなく、「課題解決起点」でのアプローチです。
少子高齢化が進み、人材獲得競争が激化する日本において、メタバース採用は「出会いの機会損失」を減らし、企業と求職者の相互理解を深める重要なツールとなるでしょう。採用担当者の皆様には、この新しい可能性をチャンスとして捉え、まずは小規模からでも試してみることをお勧めします。
参考URL:
経済産業省 - デジタル技術を活用した採用活動に関する調査
厚生労働省 - 若年者雇用動向調査
一般社団法人日本経済団体連合会 - 採用と大学教育の未来に関する産学協議会